SAPIX講師が教訓とする「考える力」を発揮するのに大切なこと

サピックス 溝端宏光
サピックス 溝端宏光
校舎の外観=SAPIX提供
校舎の外観=SAPIX提供

 初めまして! SAPIX小学部の事業本部長を務めております溝端宏光(みぞばた・ひろみつ)と申します。今回、中学受験に関するコラムを月1回のペースで連載することになりました。

 私は塾業界に入って30年と少しになります。その間、授業では算数を担当してきましたので、このコラムでは、算数が得意な子の特徴や効果的な学習法など、算数に関することを取り上げていければと思っています。入試の時期には、その年に出題された入試問題を取り上げつつ、最新の入試傾向もお伝えしたいですね。

 ただ、今までの経験上、あまりに算数に話が偏りすぎるとおなかがいっぱいになってしまう方が出てくるだろうことも予想できています(笑い)。

 ですので、ときには算数を離れて、中学受験を目指すうえでの学校選びのポイントや受験生のサポートのコツ、全体的な学びの話なども交えつつ進めていこうと思います。

 実は、私は単発のコラムや記事の執筆経験はあるのですが、連載は初めてです。途中で息切れしないように、肩の力を抜いていろいろなテーマについてお伝えしていきたいと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。

大学時代から塾講師の仕事にどっぷり

 今回は初回ですので、少し私自身のことを話したいと思います。私の出身は関西で、中学受験を経て関西のある私立中学に進学しました。その後、大学進学で首都圏に出てきたのですが、アルバイトをしようと思い、学生課の掲示を見て選んだのがSAPIXでした。その後、社員としてお世話になることになり、今に至りますので、私の塾講師歴は、そっくりそのまま私のSAPIX歴なのです。

 しかも勤務を始めたのは大学に入学した年のゴールデンウイーク明け、入学後間もない時期から始めたわけです。こんなに早くアルバイト先を決めたのには理由があります。

 私は小学生のころから、塾通いをしていく中で「塾の先生をやってみたい」という憧れがありました。そのきっかけが何だったのかは全く覚えていないのですが、家で塾の先生のまねごとをしていた記憶は残っています。中学生、高校生になってもその思いは消えず、大学受験をするときには「大学生になったら塾講師のアルバイトをするんだ!」と心に決めていました。「何のために大学受験をするのか?」というツッコミを過去の自分にしたくなりますが……。

 だから、大学合格後、引っ越しが落ち着いた段階ですぐに塾講師の仕事を探し始めたのです。もちろん最初のうちは「メイン:大学、サブ:アルバイト」をきちんと維持していましたが、段々とメインとサブが入れ替わるように……。気がついたら、塾の世界にどっぷりとつかっていました。

 もともと塾講師の仕事に「憧れ」を持っていたこともありますが、自分が頑張ったことが子供たちの役に立っているかどうかがわかりやすい業種なので「やりがい」を感じられる機会が多かったことも、大学生活よりも塾での仕事の方に魅力を感じるようになっていった要因だと思います。もちろん、最初から授業がうまくできるわけはなく、たくさん悩み、試行錯誤して少しずつできるようになっていったわけですが……。

算数の授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供
算数の授業をする溝端宏光さん=SAPIX提供

優秀な人の考え方とは

 振り返ってみると、当時は、塾講師としては“真面目”な半面、大学生としては“不真面目”であったと思います。ですが、そうした中であっても、「大学生活を送って良かった」と思えることがいくつかあります。とりわけ大きかったのは、優秀な人のものの考え方に触れることができたことですね。

 一言で言えば、優秀な人ほど、妙なこだわりや先入観を持たない。何か達成したいことがある場合に、どういった手順が考えられ、どのように進めれば現実的に達成できるのかを合理的に考える傾向にあると感じました。先入観を持たずにプラス思考で物事を考えていくことで、柔軟な発想ができるのだろうと思ったのです。ここから得た学びは、仕事だけではなく私生活においても、その後の自分の行動指針になりました。

 約30年たった今でもその教訓はいきており、「主体的な姿勢」と、「プラス思考であること」が考える力を発揮する上で大事なことだと捉えています。

 加えて、SAPIXと出合うきっかけになったことも大きいですね。先ほど書いた通り、私は関西出身ですから、仕事を始めるまでSAPIXのことは全く知らず、選んだ決め手は職場の場所と金銭面の条件だけでした。当時三鷹の大学寮に住んでおり、荻窪にあった西東京校(現在は中野校と吉祥寺校の2校舎に分かれています)が大学からも寮からも通いやすかったことに加え、高い時給に魅力を感じて応募したに過ぎなかったのです。

 ちなみに採用面接の際、建物に「開成中合格者○○名」と書かれたポスターが張ってあるのを見て、自分が応募したのがすごい塾だったことを知り、面接でガチガチに緊張したことは強く記憶に残っています。あまりに緊張していてうまく話せなかったため、面接官からの評価は「教師には向かないのではないか」というものであったと、数年たった後に上司から教えてもらいました。面接で落とされなくて本当に良かったです(笑い)。

「教えすぎるな」という上司の言葉

 仕事を始めて、当時の上司から口を酸っぱくして言われたのは「教えすぎるな」ということでした。これは、「『思考力』『記述力』を育む」というSAPIXの教育方針を反映したアドバイスなのですが、先ほど述べた、自分が大学生活から得た教訓とマッチしており、私としてはとても納得できるものでした。このあたりについては次回のコラムで触れられればと考えています。

 ここまで書いてきて気づいたのですが、今回、中学受験の話も算数の話も全くしないままになってしまいました……。

 こんなコラムですが、次回以降もお付き合いいただけますと大変うれしく思います。

Related Posts

関連記事

Share
CONTACT
記事の感想を送る