クラスに1、2人いる? 実は身近なギフテッドのリアル

Lagoon
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実は、ギフテッドは身近な存在だ(写真はイメージ)=ゲッティ
実は、ギフテッドは身近な存在だ(写真はイメージ)=ゲッティ

 「ギフテッド」という言葉から、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。

 天才や偉人といった言葉と結びつけられ、華々しい活躍をする一部の特別な人たち、とどこか遠い存在のように感じるかもしれません。確かに、メディアで取り上げられるギフテッドは、その突出した能力で世間を驚かせるような、稀有(けう)な存在に見えます。

 しかし、実際には、ギフテッドはもっと身近な存在です。一説には、クラスに1、2人はいるとも言われています。

 本コラムでは、東京都内でギフテッド特性を持つ子どもたちのためのフリースクール・個別指導塾「Lagoon(ラグーン)」を運営するスタッフ4人が、当事者や支援者としての経験を交えながら、ギフテッド特性を持つ子どもたちや取り巻く環境のリアルをお届けしたいと思います。初回は、代表のMaiが担当します。

「Lagoon(ラグーン)」代表のMaiさん=本人提供
「Lagoon(ラグーン)」代表のMaiさん=本人提供

十人十色の特性 「困り感」目立つケースも

 私自身も、ギフテッド特性を持った一人として、幼少期から周囲との違いを感じながら成長してきました。

 ラグーンには、未就学児から高校生までの多様な子どもたちが通っています。性格も、気質も、得意不得意も一人一人違い、まさに十人十色。特定の分野で目立った実績を上げる子もいれば、特性や環境、発達段階などさまざまな要因から、現時点ではむしろ「困り感」の方が目立つ子もいます。

 ギフテッド特性は、子どもたちを構成する無数のピースの中のたった一つに過ぎません。そしてその小さなピースですら、どのような性質を持ち、どのように表面にあらわれるかは、子どもたち一人一人によって全く異なるのです。

「IQ130」以上がギフテッド? 実際は……

中学生クラスのフリースクールで作ったハロウィーンのフラワーアレンジメント=Lagoon提供
中学生クラスのフリースクールで作ったハロウィーンのフラワーアレンジメント=Lagoon提供

 そもそも「ギフテッド」とはどんな子どもたちを指すのでしょうか。かつては、高いIQ(知能指数)がギフテッドの指標としてよく用いられていました。知能検査の得点の平均値がIQ100、そして平均値からのばらつきを示す標準偏差が15となるように設計されていた場合、平均値から2標準偏差上、つまり上位2%ほどにあたるIQ130以上が統計的な外れ値として扱われます。

 そこから徐々に「IQ130」という数値だけが、あたかもギフテッドの判定基準のように独り歩きするようになりました。

 しかし、近年では、IQだけでギフテッドを判断するのではなく、より多角的な視点で子どもたちをより深く見つめることが重要視されています。

 しかし、世界共通の明確な定義は存在しません。海外では、米国の全米ギフテッド児協会(NAGC)が「ギフテッドは、一つあるいは複数の分野で、同じ年齢、経験、環境にある他の子どもと比べて高いレベルの才能や能力を発揮する、あるいは発揮する能力を持っている子ども」と定義しています。

 一方で、日本の文部科学省は「ギフテッド」という言葉をあえて使わず「特定分野に特異な才能のある児童生徒」と表現し、こうした子どもたちへの支援体制の構築を推進しています。

 このように定義はさまざまですが、ギフテッドの特性を持つ子どもたちには、高い知的能力に加え、好奇心の旺盛さや、鋭い洞察力、豊かな想像力など、よく見られる性格特性があります。こうした特性が強みとなり、高い成果を発揮したり、本人の目標達成に大きく寄与したりすることもあります。

どう寄り添えば……保護者が抱える苦悩

Lagoonの教室。1クラス定員6人の子どもたちが、同世代の仲間と交流したり、自習時間を過ごしたりする=Lagoon提供
Lagoonの教室。1クラス定員6人の子どもたちが、同世代の仲間と交流したり、自習時間を過ごしたりする=Lagoon提供

 一方で、一般的な教育環境では知的欲求が満たされなかったり、周囲とのコミュニケーションの難しさにつながったり、完璧主義によるプレッシャーを感じたりといった、さまざまな課題につながることも少なくありません。学校のシステムになじめず、授業に物足りなさを感じて学習意欲を失ったり、周囲とのコミュニケーションのズレから孤立感を深めたりする子もいます。中には、学校と距離を置き、不登校を選択する子もいます。

 また、子どもたちだけではなく、ギフテッド特性を持つ子どもの保護者にも特有の難しさがあります。

 例えば、子どもが強い好奇心から次々と質問を投げかけてきたり、寝食を忘れるほどの集中力を発揮したりすることに、どのように対応すればいいのか途方に暮れてしまった、という話は何度も聞いたことがあります。

 高い感受性を持つ子どもの場合は、周囲の小さな変化にも敏感に反応し、感情が激しく起伏したり、時には心身の不調を訴えたりすることもあります。一般的な育児書が通用しない子育ての難しさに、親としてどう寄り添えばいいのか、頭を悩ませる保護者が多いのも実情です。

 さらには、学校や友人、家族など周囲に子どもの特性を理解してもらえず、孤独感を覚えているケースもあります。それにもかかわらず、ギフテッドの具体的な特性や対応については認知度が低く、相談できる専門家を見つけることも容易なことではありません。

 ユニークな子どもの成長を応援したいと願う一方で、どのように子どもの困り感を扱い、どう守るべきか。ジレンマを抱えています。

ギフテッドの「リアル」を伝えます!

 このように、ギフテッド特性を持つ子どもを理解し、成長を支えることには大きな喜びがある一方で、その過程には多くの難しさが伴うことがあるのも現実です。

 本コラムを通じて、ギフテッド特性を持つ子どもたちの姿を世の中に広く知っていただけたらうれしく思います。そして、当事者やその保護者、そしてギフテッドの成長に関わる全ての方にとって希望となることを願っています。

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