日本と違いすぎるフランスの新学期 凸凹3兄弟は我が道をゆく
はじめまして。2023年から息子3人と夫を帯同し、パリの国際機関に赴任しているぽんずです。慣れない海外暮らしや子育ての由無し事をつづっていきたいと思います。よろしくお願いします!
長男は「親の知らない世界」へ
フランスの学校では、9月から新たな年度がスタート。我が家では、今年度から日本人学校に転校するという案があったものの、いろいろあって結局、3人とも昨年度同様、現地の学校に通っている。
まず、小6の鉄オタ長男は、英仏バイリンガルの私立校の7年生に進級。近所のクラスメートと一緒にメトロで通えるこの学校をかなり気に入っている様子。
早速、10月には4泊5日のSchool Trip(宿泊学習)に参加した。英語もフランス語もできない中で、心配しながら行かせた去年に比べたら、今年は語学力も身に付いて、親も子も気楽なもの。
去年は「3言語を同時に学ぶのは負担が大きすぎる」ということで免除されていた外国語(スペイン語)にも、今年は挑戦すると自分で決め、もはや「親の知らない世界」へと向かっている。
シャイな次男は積極的に
シャイだけれど少々お調子者なところもある小3の次男は、フランス語がしゃべれないなりに現地公立学校を楽しんでいる。
夏前に日本人学校を見学させたら「フランスの学校でもいいしー、日本人の学校でもいいよー」と言うので、引き続き近所の公立小学校に通わせることに。
昨年度は、ほとんどの時間を本来の3年生クラスではなくUPE2A(新入外国語話者向けクラス)で過ごした。今年度は基本的に通常の4年生クラスで学ぶ。授業についていけるか心配ではあるものの、まあ、学習より「異文化経験」重視ということで。
年度初めにあった仏語・算数の学力テストの結果を受けて、担任からは「発音と表記の理解ができていないので、毎日オーディオブックを聞きなさい」という指導があったけれど……。
課外活動のチェスに参加することにしたり、ハロウィーンにケーキを焼いて持って行ったりして、少し積極的にもなってきた。
少しは落ち着いてきた不登校の三男
親がもっとも手を焼いているのが、小2の三男。「子どもにも決める権利があるんだよ!」と主張し、4月から完全に不登校。本人いわく「学校の授業は簡単過ぎてつまらない」らしい。
三男は、ギフテッド(高い知能を持つが、発達上の問題もある)の傾向を指摘されている。保育園の年長あたりから科学マンガを読みふけり、昨年早々に日本から持参したハリーポッター全巻を読破。この秋は学習まんが「日本の歴史」シリーズも読み終え、「世界の歴史」シリーズを読んでいる。
感情の切り替えやコントロールが難しく、自分が納得できないことはしない。
精神医療センターでセラピーを受けるには、家から遠い日本人学校では難しい。本人はフランス語を学ぶのは嫌ではないらしいし、急に学校に行きだす可能性(というか期待)もあるし……ということで、とりあえず次男と同じ現地公立校に登録したまま、引き続き不登校を続けている。
良い兆候もある。
フランスに越してきて以来ずっと、「ドラゴンに乗って、日本に飛んで帰ってやりたい」と訴え続けてきたイオンモールのゲームを、夏休みの一時帰国中に十分堪能できた。それがよかったのか、引きこもり傾向も家での暴力も少しずつ緩和されてきた。
食器洗い機から食器を出して片付ける、というお手伝いもまあまあ習慣化してきた。以前の「注意されると舌打ちしてにらみつけ、無言で立ち去る」というのと比べれば、大きな進歩。ピアノの練習もほぼ毎日続け、発達上問題がある子どもたちの集まりにも参加し始めている。
新学期前の親のストレスが激減
ところで今年、子どもたちの学校では、親にとってとてもありがたい大きな“変化”があった。
フランスの公立小学校では授業料はもちろん、ノート類も無料支給。教科書は貸与でブックカバーをかけて使用し、学年末に返却する。
去年、次男と三男の通う公立小では新学期の初日に「用意すべき文房具一覧」が配られた。この時期、スーパーには新学期用のコーナーが設けられ、保護者と子どもで大混雑する。私たちも慌てて近所の大きめのスーパーへ走り、一覧表の単語をもとにインターネットで画像を検索し、店内を探し回って購入した。
私立校に通う長男の学校の準備で大変だったのは、理科の白衣と防護メガネ。学校指定の小さな書店には取り扱いがなく、超大型スーパーでも売り切れ。どこで買ったらよいのか分からず、結局、通販で入手した。
担当の先生が夏休み中に変更になって急きょ指定教科書も変更になったり。何とか手に入れたフランス語の教科書が表紙だけ上下逆さまだったり。そもそも絶版の英語本を指定されたので英米から取り寄せなくてはならなかったり。てんやわんやだった。
ところが……。
今年から、パリ市の公立小では文房具を無償で配ることにしたようで、次男の連絡帳にも昨年のような「指定文房具一覧」はなし。親が用意するのは、貸与の教科書に付けるブックカバーのみだった。
長男の私立校では500ユーロ(1ユーロ=約160円)の追加徴収にはなったものの、パソコン以外は教科書もノートもファイルものりも全て学校が用意してくれることになった。
おかげで新学期のストレスが激減し、とても助かっている。
「知らなかった」では済まされない書類の数々
新年度にどっさり書類が配布されるのは、日本と全く同じ。というか、子どもが自分で連絡帳にのりでべたべたと貼りつけてくる。日本のように「あれ、どこ行った?」がなくていいのだけれど、次男はいつも数ページ飛ばして貼ってくるのでアタマがイタい。
配布される書類の中に、「学校における非宗教性憲章」というのがある。「国家と宗教の分離」「良心の自由」「暴力と差別の禁止」「教育の世俗性」などが書かれていて、校舎の入り口に「フランス人権宣言」とともに掲示されているとても大切な文書だ。
給食は、各家庭が利用日を決めて申し込む。毎日あるいは週に数日でもいいし、給食を取らずに家でご飯を食べるというのでもいい。給食費は所得によって違い、パリの場合は、所得区分1(0・13ユーロ/1食)から所得区分10(7ユーロ/1食)まで、その差54倍! この所得区分は、放課後のアクティビティーやバカンス中の学童の利用料にも使われる。
肖像権についての書類もある。子どもの写真の利用範囲(学校の連絡アプリ掲載や集合写真の可否、モザイクの要否など)をチェックし、両保護者だけでなく、子どもも、説明を受けて理解したという欄に署名をする。
フランスは契約社会なので、こうした書類をちゃんと読んで署名しないといけないし、「知らなかった」なんて逃げられない。
……とまあ、バタバタと始まった新年度。私の方はといえば、7月と8月はテレワークを併用しつつ仕事をしたので半分バカンス気分だったけれど、9月中旬からぞろぞろと人が戻ってきて、本格始動した。
この仕事ももう2年目。子どもたちに負けずに頑張らなくては。