子どもと一緒にワーケーション? 記者が手に入れた「両立方法」

今村茜
今村茜
知床滞在時の記者ワークタイムの様子。娘たちは地域の人たちとバーベキューを楽しんでいた=北海道斜里町で2021年7月、今村茜タイマー撮影
知床滞在時の記者ワークタイムの様子。娘たちは地域の人たちとバーベキューを楽しんでいた=北海道斜里町で2021年7月、今村茜タイマー撮影

 共働きで子どもを育てている方は、「仕事が忙しくて子どもにいろいろな体験をさせてあげられない」という悩みを抱えたことはないでしょうか。女性活躍が叫ばれ、出産後も働ける環境が整ってきましたが、「子どもとの時間」が「仕事時間」とバーター関係にあることは変わりません。

 しかし、子どもの豊かな経験と自分の仕事のどちらもをかなえる選択肢があるのです。それが「親子ワーケーション」です。この連載では、2019年からワーケーションを事業として企画し、自ら子連れで実践してきた記者が、その魅力と参加方法について解説していきます。【今村茜】

「受験勉強より生きた学び」と長女

 「家族旅行より、行った先でお友達ができるワーケーションの方が好き」。これは、小学2年生で親子ワーケーションデビューをし、今は中学2年生となった長女(14)の言葉です。夏休みや春休みはもちろん、たまには学校を休んで北海道や沖縄、鳥取や長崎に連れ回したため、中学受験をする同級生も多かったのですが、その選択肢はありませんでした。しかし、長女は「受験勉強より生きた学びが身についた」と言います。

 パソコン1台で仕事ができる人が、旅先で働く「ワーケーション」は、都会で暮らす人や企業を地方に呼ぶ手段として、地域活性化や地方創生の流れで17年ごろから和歌山県や長野県で取り組みが始まりました。

 当初はわりと小規模な取り組みだったのですが、新型コロナウイルス禍に見舞われた20年夏、国が「観光需要底上げ」を目的に積極的に推進したことで、一気に全国に広がりました。

 リモートワークが可能な人が、リフレッシュや人脈形成を求めて地方を訪れ、旅をしながら仕事をするスタイルは、「普段と同じオフィスにいるより新しいアイデアを思いつく」「地域課題を知ることで新規事業の創出につながる」などと、企業にとってもメリットにつながったようです。

2021年夏に3回目の訪問をした北海道斜里町で。知床半島を自然ガイドとともに探検=北海道斜里町で2021年7月、今村茜撮影
2021年夏に3回目の訪問をした北海道斜里町で。知床半島を自然ガイドとともに探検=北海道斜里町で2021年7月、今村茜撮影

子どもがいる人こそ挑戦を

 一方で、「小さな子どもがいたら実践できない」といった声が聞こえてきたのも事実です。そこで、子ども3人を育てつつ、これまでに延べ30回以上、親子ワーケーションを実践した記者は断言したいと思います。「子どもがいる人こそ、子連れでワーケーションをしてほしい」

 長い小学校の夏休み、共働きであれば夫婦の休みがあうのはお盆だけ、という家庭も多いかと思います。でも、お盆期間はどこに行っても混雑しますし、宿泊費や航空券代もかさみますよね。

 お盆以外で休みが取れないなら、旅先で仕事をすれば、休暇を取らずとも子どもと一緒に過ごせます。しかしその場合、ワークタイム中の子どもの預け先が必要になります。

 コロナ禍前は、保育園の一時保育や小学校の体験入学は「里帰り出産など地域に縁のある人向け」の場合が多く、記者もなかなか仕事中の子どもの受け皿を確保できませんでした。現地ですぐにはシッターも見つかりません。

 その経験から、記者は19年に「ならば自分で作ろう」と毎日新聞社の新規事業として、「親子ワーケーションの受け皿づくり」を始めました。「親子ワーケーション部」というフェイスブック(FB)コミュニティーを作ったり、全国の自治体と親子ワーケーション企画を開催したり。徐々に認知度が広がり、22年ごろからは各地の自治体や宿泊、旅行事業者らが、親子ワーケーション企画を開催するようになりました。保育園や小学校も地域外の子に開かれるようになり、体験入学や一時保育が利用できる自治体も増えています。

 インターネットで「親子ワーケーション」と検索してみてください。今ではさまざまな企画の開催告知が並んでいます。夏休みや冬休み、春休みなど「子どもは休みだけど親は仕事がある」期間は特に多く、記者が初めて実践した頃とは、隔世の感があります。

漁師や元教諭… 深い地域との関わり

 さて、先に述べた長女の言葉に戻りますが、親子ワーケーションの魅力とは何でしょうか。それは、親のワークタイム中、「子どもが地域の方々と都会ではできない経験をする」ことではないでしょうか。

2021年秋の鳥取県大山町での親子ワーケーションでは、漁師一家とともに活動。とれたてのイカは透明ということを知りました=鳥取県大山町で2021年11月、今村茜撮影
2021年秋の鳥取県大山町での親子ワーケーションでは、漁師一家とともに活動。とれたてのイカは透明ということを知りました=鳥取県大山町で2021年11月、今村茜撮影

 鳥取県大山町の企画では、子どもたちが漁師と一緒に港で魚をさばき、ウニを割って中身を出して、極上の海鮮丼を作ってくれました。漁師さんら大山町の方々とは家族ぐるみで仲良くなり、その後、何回も再訪しています。

 埼玉県小鹿野町の企画では、元小学校教諭などの経歴を持つおじいさん、おばあさんに昔遊びや工作を教えてもらいました。子どもに「集合!」と呼びかけるおじいさんの生き生きした顔、丸太を切ってコースターを作った子どもたちの笑顔は忘れられません。

 家族旅行では、観光地をめぐり、レストランで食事をし、ホテルに泊まる――。地域の方と仲良くなる機会は少ないのではないでしょうか。しかし、親子ワーケーションでは、子どもを介して地域の方とより深く関われます。我が子が地域の子と仲良くなれば、「あの子とまた遊びたい」と再訪するきっかけにもなります。そうした「地域との関わり」も一つの魅力です。

子どもに第二のふるさとを

 こうした経験が得られることから、「東京育ちでふるさとと呼べる場所がない。子どもにふるさとをつくってあげたい」「子どもが不登校になった時、都会ではない避難先をつくっておきたい」などの理由で、企画に参加される方もいます。いわば、「子どものBCP(事業継続計画)対策」です。

 企業が災害時に備えて地方にサテライトオフィスをつくるように、我が家の万が一に備えて地方に第二のふるさとをつくる――。これも、すてきな参加動機だと思います。

 ここまで読んで、「参加してみたいな」と思った方に朗報です。記者が関わっている鳥取県での企画の内容をご紹介するオンラインイベント<地域交流×異文化体験×親子ワーケーションin鳥取・湯梨浜町 来年3月開催の企画をご紹介! #働くを考えるvol.23>を、12月20日(金)正午~午後1時のランチタイムに開催します。

オンラインイベント<地域交流×異文化体験×親子ワーケーションin 鳥取・湯梨浜町 来年3月開催の企画をご紹介! #働くを考えるvol.23>バナー
オンラインイベント<地域交流×異文化体験×親子ワーケーションin 鳥取・湯梨浜町 来年3月開催の企画をご紹介! #働くを考えるvol.23>バナー

 3月に開催する企画で、イベント当日に申込先もご案内します。オンラインイベントのお申込者には見逃し配信URLもお送りするので、ご都合が悪い方も、ご興味があればお気軽にお申し込みください。詳細、申し込みはこちら(https://nextstyle48.peatix.com)です。今回は親子ワーケーションが社会に広まってきた経緯と、その魅力についてお伝えしました。次回は、具体的な実践方法のヒントをご紹介しようと思います。

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