働く女性の婚活 自分の理想との向き合い方、「選ばれる」方法

自分を選んでくれた人を大切に(写真はイメージ)=ゲッティ
自分を選んでくれた人を大切に(写真はイメージ)=ゲッティ

 25歳から44歳の女性の就業率は年々上昇し、今では約8割の女性が働いています。それに伴い、女性の生涯未婚率も増加しています。「結婚したいけれど出会いがない」「成婚に至らない」と悩む女性たちが増えているのはなぜでしょうか。働く女性たちは婚活にどのような難しさを感じているのでしょう。

 アラフォー・アラフィフ専門の婚活カウンセラーである伊藤友美さんのもとには、こうした悩みを抱える女性たちが日々相談に訪れます。今回は、婚活を始めて1年で結婚を決めた2人の女性のエピソードをご紹介します。

 ※プライバシーに配慮して、事実関係の一部を変更しています。

「身近なところで相手を探そう」と転職をきっかけに婚活開始

 35歳のW奈さんは、不動産会社に転職したばかりの働く女性です。彼女は転職をきっかけに婚活を本格的に始めることを決意しました。以前勤めていたインテリア関連の会社は、スタッフのほとんどが女性で、出会いの場は限られていましたが、新しい職場には同世代の男性も多く、W奈さんは「まずは近くにいる人の中から相手を探してみよう」と意気込んでいました。

理想とは違う同僚の男性から好意を寄せられ……(写真はイメージ)=ゲッティ
理想とは違う同僚の男性から好意を寄せられ……(写真はイメージ)=ゲッティ

 女子大出身で家族は両親と姉妹というW奈さんは、これまで本格的に交際した男性がいませんでした。恋愛経験が乏しかったことから、彼女がひかれるのは背が高く、はっきりとした顔立ちの「モテそうな男性」。これまで好きになった男性たちは、誰にでも気軽に話しかけるいわゆる遊び人タイプばかりで、関係は曖昧なまま自然消滅することが多かったといいます。

 転職先の会社でW奈さんが最初に目を留めた男性も、恋愛経験が豊富そうな雰囲気の同僚でした。たまたまランチを共にする機会があり、連絡先を交換したW奈さんは、時折メッセージを送り、さりげなく好意を伝えました。しかし、今のところその相手からの積極的な反応はありません。そんな中、隣の部署の1歳年下の男性が時々ランチに誘ってくれるようになりました。

 彼は小柄で目立たない存在で、W奈さんの理想のタイプとはかけ離れていました。しかし、一緒にいると緊張せず、自然な気持ちでいられるため、W奈さんは「まあ、いいか」と感じていました。特に積極的な好意を感じるわけでもなく、ただ時折ランチを共にするだけの関係が続きました。そんなある日、帰り際に彼から「何か食べて帰る?」と誘われ、居酒屋で食事をすることになりました。雑談をしている中で、彼が突然「よかったら付き合わない?」と告白したのです。

彼との結婚で感じた「安心感」と「愛情」

 その男性は、W奈さんが理想としていた高身長のイケメンでもなく、胸がときめく相手でもありませんでした。しかし、一緒にいると居心地が良く、話しやすかったといいます。W奈さんは「自分に好意を寄せてくれることがありがたい」と思い、「まあ、いいか」という軽い気持ちで交際を始めました。

 交際を続けていくうちに、彼との居心地の良さが変わらないことに気づきました。それどころか、一緒に時間を過ごすほどに、思っていた以上に頼りになる一面を見せてくれるようになり、W奈さんは次第に彼にひかれていきました。

 1年後、2人は結婚に至ります。現在、W奈さんは部署を異動しましたが、同じ会社で働きながら仲良く暮らしています。W奈さんが彼に「私のどこがよかったの?」と尋ねると、「ひと目ぼれだった」と返ってきたといいます。交際が始まってからも、結婚後も、W奈さんは「彼の愛情をひしひしと感じて、安心していられる」と語り、幸せそうな表情を見せます。

「40歳までに」と決めて、婚活アプリに登録した(写真はイメージ)=ゲッティ
「40歳までに」と決めて、婚活アプリに登録した(写真はイメージ)=ゲッティ

「家族がほしい」と感じた瞬間から婚活を始める

 次に紹介するのは、39歳のS乃さんです。フリーランスでウェブデザインの仕事をしており、1人暮らしの自由な生活を満喫していました。家事が苦手で、料理もほとんどしないS乃さんは、自分には結婚は向いていないと感じていました。また、芸術家肌のセンスの良い男性が好みで、現実的に振り向いてもらえることは少なかったため、恋愛に対して積極的ではありませんでした。

 そんなS乃さんの心境が変わったのは、双子の姉が妊娠したときでした。S乃さんの姉は10年以上前に結婚しましたが、子どもを持たず、自由に過ごしていました。しかし、姉が子どもを授かったことで、S乃さんの中に「私も家族がほしい」という気持ちが初めて芽生えたのです。

 S乃さんは婚活アプリに登録し、数人の男性と会うことにしました。知らない人とメッセージをやり取りしたり、心がときめかない相手と会ったりするのは楽しいとは思えませんでしたが、「40歳までに」と期限を決め、集中して取り組むことにしたそうです。

 何人かの男性と会いましたが、運命的な出会いはありませんでした。ほとんどの相手とは1、2度会っただけで連絡が途絶えてしまいましたが、1人だけ継続して会うようになった男性がいました。彼は1歳年上で、無口で真面目そうな男性でした。一緒にいても話が弾むわけではなく、「楽しい」と感じることもありませんでした。しかし、彼はS乃さんを気に入ってくれたようで、毎回帰り際に「次はいつ会えますか?」と次の予定を聞いてきたのです。「まあ、いいか」と思いながら、S乃さんは定期的に彼と会い続けていました。

「そのままの自分でいい」と言ってくれた彼との結婚

苦手な家事は、夫が担当。自分を変えずに幸せな結婚生活を送っている(写真はイメージ)=ゲッティ
苦手な家事は、夫が担当。自分を変えずに幸せな結婚生活を送っている(写真はイメージ)=ゲッティ

 40歳を目前に、S乃さんはその彼と結婚することを決めました。「自分を変えなくてもいいと言ってくれたからです」とS乃さんは語ります。彼女は、「相手に合わせて自分を変えなければならない結婚は、自分には無理」と思っていましたが、「変えなくていい」と言われたことで踏み切れたと言います。

 結婚後も、S乃さんは家事をしません。夫が料理や掃除をしてくれ、S乃さんの望む「自分を変えないままの結婚生活」が実現しています。

 S乃さんのように「自分は結婚に向いていない」と思い込んでいる女性の中には、「結婚をしたら家事や育児は自分の役目」と考える人が多くいます。しかし、結婚生活は夫婦2人で築き上げるものです。母親の姿を見て「自分にはできない」と思っていても、必ずしも母親と同じ役割を担う必要はありません。自分がどんな結婚生活を望むかを考え、それを実現できるパートナーを見つけることが大切です。

婚活の成功法 「自分を選んでくれた人の中から伴侶を選ぶ」

 W奈さんとS乃さんのエピソードから学べるのは、「自分を選んでくれた人の中から選ぶ」ということです。婚活が長引く人の多くは、自分が選んだ相手にこだわりすぎてしまう傾向があります。実際、婚活中の女性が、自分に関心のない男性を振り向かせるのは非常に難しいのです。成功例はほとんどありません。

付き合い始めると、居心地の良さを実感(写真はイメージ)=ゲッティ
付き合い始めると、居心地の良さを実感(写真はイメージ)=ゲッティ

 婚活では、自分を選んでくれた相手の中から選ぶことで、スムーズに成婚に至るケースがぐんと増えます。これはビジネスの世界でも、ニーズのない市場に売り込むより、需要のある市場にアプローチするほうが効率的であるのと同じです。

 とはいえ、結婚はビジネスのように割り切れない部分もあります。「自分を好きになってくれる人」が自分の理想と一致すれば良いのですが、そうでない場合、どうしても気持ちがついていかないこともあります。

「会うのが嫌でなければ続けてみる」というスタンス

 W奈さんとS乃さんの成功から、もう一つ学べる婚活のセオリーは、初対面で「好きになれるか」を判断しないことです。大人の婚活では、ひと目でひかれる相手に出会うのはまれです。2人とも、最初は相手に強くひかれていたわけではありませんが、「まあ、いいか」と許容し、何度も会うことで少しずつ気持ちが育まれていきました。「好きとは思えなくても、会うのが嫌ではない」と感じられる相手であれば、積極的に会い続ける価値があります。

 私は、婚活を始める人に、「理想の人リスト」を書くことをおすすめしています。「自分を選んでくれた人から選ぶ」という考えと矛盾するように感じるかもしれませんが、そうではありません。自分の理想を正直にリストアップすることで、100%一致しなくても、理想に近い相手に出会える可能性が高まります。ただ、その相手が最初から「好きになれそう」と思える人とは限らないということです。

 W奈さんもS乃さんも、「妥協して結婚したわけではない」と断言します。2人とも「夫は理想に近い相手」だと言いますが、それに気づいたのは、何度も会ううちに気持ちが変わってきたからです。もし、第一印象で切り捨ててしまっていたら、理想のパートナーには出会えなかったかもしれません。

(取材・文/伊藤友美)

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