保育園への入園決定率が低下 育休延長希望者増加でミスマッチか
首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と全国の政令指定都市の計100市区を対象にした調査で、認可保育施設に申し込み、実際に入園が決まった児童の割合は2024年度は79・1%となり、23年度(80・8%)より1・7ポイント下回った。調査した民間団体は「1年以上育休を取りたいと考える親の増加により、1歳児クラスに希望が集中し、需要と供給のミスマッチが生じている可能性がある」と分析する。
2年連続で微減
調査をしたのは、保護者としての立場から保育のあり方や政策について提言をする民間団体「保育園を考える親の会」(東京都豊島区)。01年度から毎年実施している。原則4月時点で、認可保育施設への入園状況や保育士の配置状況などについて調査し、10月末に結果を公表した。
入園が決まった児童の割合は、22年度(81・2%)をピークに2年連続で減少している。親の会顧問の普光院(ふこういん)亜紀さんは「都市部の場合、0歳児クラスは年度前半であれば入れる保育所も多くあるが、1歳児クラスは4月で定員が埋まる傾向にあり、競争率が高くなっている」と指摘。
その要因として、育休延長希望者の増加による影響を挙げる。現行の育休制度は、原則として満1歳まで。ただし、認可保育施設への入園が決まらず待機児童になった場合などは、最大2歳まで延長ができる。
延長申請には、入園できなかったことを証明する「不承諾通知書」の提出が求められる。そのため、あえて落選しやすい人気園のみを希望するなど、「(今すぐの)入園を希望しない入園申請」が増加している可能性もあると普光院さんは分析する。
「落選狙い」来年度から審査を厳格化
国は、こうした「落選狙い」の入園申請による自治体の業務負担解消のため、来年度から延長申請の審査を厳格化する。
これまで、自治体によっては、育休延長希望者には入園申請時に申告してもらい、優先順位を下げて利用調整して対応してきた。
今回の調査では、育休延長が可能な場合の、来年度の利用調整の対応についても聞いたところ、1割が「一切配慮しない」と回答。一方で、「入園申請書に優先順位を下げて良いなどのチェック欄を設ける」など何らかの対応をする自治体は7割に上った。残り2割は「その他(検討中・未定・その他)」だった。
国の「待機児童数」と「未決定児童数」に大きな差
国が定義する「待機児童数」と、いわゆる「隠れ待機児童数」を含む「未決定児童数」についても調べた。
隠れ待機児童とは、利用を希望した認可保育施設に入れていないにも関わらず、特定の施設のみ希望していたり、認可外保育施設を利用していたりすることを理由に、国の待機児童にカウントされない児童を指す。
国は、4月現在の全国の待機児童数を2567人(前年比113人減)と発表したが、親の会が算出した未決定児童数は9万2141人(同4798人増)に上った。
対象100市区でも、未決定児童数は4万3392人(同3277人増)で、国の待機児童数606人(同34人減)と大きな差があった。
国の待機児童数は減少している反面、未決定児童数の増加や、入園決定率の低下から、入園状況の悪化傾向が浮き彫りとなった。
待機児童にカウントされない最も多い理由は……
調査では、未決定児童数について、待機児童にカウントされない理由別の内訳もまとめた。最も多かったのは「特定園希望者」で4割を占めた。「特定園希望者」の中には、施設が遠かったり、見学したが保育の質に不安があるなどの理由で辞退したケースも含まれるが、特定園希望者の半数が育休延長希望者である可能性があると答えた自治体が複数あった。
制度の複雑化「見直しが必要」
普光院さんは、「以前に比べ、入園しやすくなっているのは事実だが……」と前置きした上で、「育休延長制度や待機児童数のカウント方法の複雑化が自治体の業務を増やし、正確な入園事情を見えにくくしている。保育体制の細やかな調整を困難にしている可能性があり、見直しが必要だ」と訴える。
調査結果をまとめた冊子は、親の会ホームページ(https://hoikuoyanokai.com/guide/check/)から注文できる。1冊税込み1100円で、送料実費。【近藤綾加】