妊産婦の自殺、2年間で118人 産後3カ月~1年が半数以上
妊娠中から出産後1年以内に自殺した妊産婦が、2022年と23年の2年間で少なくとも計118人に上った。国内の自殺対策の調査・研究を担う一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)」(厚生労働相指定法人)と日本産婦人科医会が、警察庁の自殺統計を基に分析し、明らかになった。
警察庁は、死因が自殺と判断された人の年齢、性別、職業のほか、推測される原因・動機ごとに集計し、自殺統計として毎年、公表している。22年1月からは、女性の自殺者について、妊娠中▽産後2カ月以内▽産後3カ月~1年以内▽該当なし――の項目を新たに追加した。妊産婦の自殺の実態が記録されるようになり、JSCPと日本産婦人科医会が初めて協働で分析した。
それによると、妊娠中や産後1年以内に自殺した妊産婦は22年が65人、23年が53人で2年間で計118人だった。うち、「産後3カ月~1年以内」は66人で半数以上を占めていた。
妊娠中は33人(28%)、産後2カ月以内は19人(16%)。自殺者の7割が「産後」だった。
産後に自殺した人の割合は年齢層別では「40~44歳」が最も高かった。一方、妊娠中に自殺した人は「20~24歳」が最も高かった。
産後の自殺者の原因・動機は「家庭問題」が68%、「健康問題」は49%だった。「家庭問題」の具体的な内訳は「子育ての悩み」(79%)が最も多く、「夫婦関係の不和」(22%)、「家族の将来悲観」(9%)が続いた。「健康問題」では、「病気の悩み・影響」として「うつ病」が79%で最も高く、「統合失調症」(12%)や「摂食障害」(10%)もあった。
妊娠中に自殺した人の原因・動機は、「配偶者あり」の場合、「家庭問題」(60%)や「健康問題」(40%)の割合が高かった。「配偶者なし」の場合は「交際問題」が最も高く、67%に上った。
JSCPの清水康之代表理事は「医療体制の充実などにより、日本の妊産婦死亡は世界的に見ても低い水準である一方、これだけの妊産婦が自殺で亡くなっている事実を非常に重く受け止めています」と話す。今後、自殺死亡率の高い層を意識した妊産婦の自殺対策について具体的に検討していくとしている。
日本産婦人科医会などは、妊産婦や家族向けにつらくなったときや困ったときの相談窓口を記載したリーフレット(https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/01/240131.pdf)を公開している。「妊娠・出産・育児の時期のお母さんを支える窓口はいくつもあります。母子健康手帳の交付を受けた保健センターなどの窓口の方、かかりつけ医療施設の医師や助産師・看護師、ソーシャルワーカーなどに声をかけてください」と呼びかけている。【近藤綾加】
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